リクレイタイル
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Re-Clay Tile / リクレイタイル
美とタイル産業の未来
「リクレイタイル」は、まもなく限界を迎えるタイル産業界の
原料リサイクルの課題に対応するために生まれました。
行き場を失った余剰釉薬を再びタイル生産に繋げることで、
環境負荷を軽減し、独自の美しさと質感を持つ
新しいタイルづくりを実現しました。
循環型社会の実現に貢献し、
持続可能な未来へ向けたタイル産業の
新たな可能性を切り開きます。
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タイル産業のこれまで
循環型坏土のしくみ
タイルの原料(素地となる坏土や表面をコーティングする釉薬)は、これまでもある程度はリサイクルされてきました。焼成されてしまった廃棄タイルは粉砕し、使い切れなかったりブースの洗浄後に溜まった「釉薬の残留物」も、一定量までは原料業者が回収し、坏土に混ぜられ再び原料として循環していました。
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大量生産から少ロット生産へ
タイル生産は原料に天然資源を用い、焼成時にはCO2を排出します。過剰な在庫の保管や廃棄にもエネルギーを要するなど、ただ闇雲に生産をおこなうだけでは自然環境への影響が計り知れません。旺盛な建築需要に応える大量生産から、「必要な時に、必要な分だけ」をモットーとした生産へ移行する工場が増えました。
タイル産業が抱える問題
日本のタイル産業が抱えるジレンマ
日本製のタイルの特徴は、その豊かな釉薬表現にあります。多くがインクジェットプリントによる着色に置き換わりつつある海外製のタイルとは違い、日本製のタイルには長年継承された釉薬の知識と技術が詰まっており、世界でも高い評価を得ています。
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一方で、タイル生産の主流であるスプレーを使った釉薬塗装は、すべての釉薬を無駄なく素地に施釉することができません。生産の少ロット化によって増加したブース洗浄の回数に比例し、洗い流される釉薬量も増加します。結果、工場では購入量に対して「使い切れなかった余剰な釉薬」の比率を高めることになりました。
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処理能力の限界
釉薬には、銅・コバルト・鉄などの金属酸化物が含まれます。そのまま廃棄すれば、有害な物質が自然環境に悪影響をもたらすため、これまでは原料業者が販売量の一定比率を上限に回収し、乾燥して坏土に混ぜるなどのリサイクルをおこなっていました。しかしながら現在、回収比率の上昇は業者の処理能力の限界を越え、行き場を無くした余剰釉薬が蓄積されることになりました。
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日本製タイルにとって、釉薬は切り捨てることのできないものです。余剰釉薬の問題を解決しなければ、いずれタイル産業自体も行き場を失うことになります。業者の回収に頼ることなく再利用する方法の摸索が急務となりました。
タイル産業の未来を守る取り組み
耐火度調整技術の開発
釉薬の残留物には様々な不純物も混ざり、製品として発色を安定させるのは不可能に近い状態です。そのため顔料などで色を整え、タイル素地の原料としての利用を試みましたが、単に乾燥させて坏土に混ぜるだけでは耐火度が低く、高温焼成時に溶けて流れてしまうため、別の材料を添加して、耐火度を上げる実験を繰り返しました。度重なるテストを経て、焼成時の溶けだしを抑えることに成功しました。
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二層成形技術の採用
焼成後も形を保つことはできても、高温でガラス化する釉薬を主体とした原料は、「さや」と呼ばれる窯の棚板にくっついてしまうため、このままではタイルとして生産することができません。そこで通常の原料を下層に、耐火度調整後の再生原料を上層に敷いてプレスする「二層成形」を採用しました。これによって、再生原料の独特な表情を持ちつつも、裏側はしっかりとタイル本来の機能を持たせることに成功しました。
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新たに生まれた価値
こうして生まれた新しいタイルを、私たちは「再び土(原料)としての価値を得て生まれたタイル」という思いを込め、「リクレイ(Re-Clay)タイル」と名付けました。
リクレイタイルが生み出す2つの価値
空間創造を助ける
魅力的なタイル
×
タイル産業を守る
原料サイクル
リクレイタイルには、余剰釉薬を使ったからこそ生まれた独特の風合いがあります。リサイクルの観点を抜きにしても、1つのタイルとして十分な美しさを有しており、空間美創造に役立てる魅力を持ち合わせています。永くタイル産業を支え続ける、その第一歩として生まれた新しい原料サイクルとして、現在特許を申請しています。タイルとしての美と産業の未来のため、現在もさらなる開発を進めています。
試作品
これまでにリクレイタイルとして製作した試作例です。
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リクレイタイルは現在も商品化にむけて試作を重ねている段階です。開発にご参加いただける法人様、リクレイタイルの使用にご興味をお持ちいただけた設計士・デザイナーの皆様、是非お問合せください。